少子高齢化が進む日本社会では、人手不足が深刻化しています。自動車整備業界でも、シニア整備士を採用する企業が増えています。ここでは、自動車整備工場でシニア整備士を雇用するメリットや注意点について解説します。
かつて日本では「人生50年」と言われましたが、現在は「人生100年時代」が到来しようとしています。かつては高齢を理由に引退していた人々も、今ではシニア人材として積極的に活躍する機会が増えています。また、同時に日本社会では超少子高齢化が進み、若い世代が不足している現状も無視できません。
このような状況を受け、自動車整備業界でもベテランのシニア整備士を再雇用し、現場で活躍してもらおうとする動きが広がっています。一方で、定年退職後のシニア世代には、加齢による体力や認知機能の影響も考慮しなければなりません。シニア人材を雇用する企業には、適切な職場づくりや就労環境の整備が求められます。
自動車業界は日々進歩しており、自動運転システムや自動ブレーキシステムなどの技術が進化しています。また、2020年4月1日からは、電子制御装置の整備に関する特定整備制度が施行されました。経過措置期間が2024年3月31日で終了し、自動車整備工場でも特定整備の実施が求められるようになりました。
しかし、こうした電子制御装置や自動運転システムは、シニア世代が技術を習得していた時代には存在しなかったものです。シニア整備士を雇用する場合、熟練の整備士としての経験やスキルと、新しい技術とのバランスをどう取るかが重要なポイントとなります。
日本自動車整備商工組合連合会が発行した「自動車整備業高齢者雇用ガイドブック」では、シニア整備士を雇用する企業の声が紹介されています。具体的には、以下のようなメリットが挙げられています。
しかし一方で、現代の自動運転技術や電子制御システムに対応する知識や技術が不足している点が懸念されています。また、パソコンやスマートデバイスの操作に慣れていないシニア世代も多く、新しい技術になじめないリスクがあることも事実です。
もちろん、シニア整備士でも新しい技術を学ぶことは可能です。しかし、企業側は若手だけでなく、シニア世代にも対応した研修制度やサポート体制を整えることが求められます。
シニア整備士の価値を最大限に引き出し、シニア雇用を成功させるためには、企業として以下の取り組みが不可欠です。
シニア世代と一口に言っても、それぞれの人材が持つ技術や経験は異なります。シニア整備士の技能を最大限に発揮させるためには、雇用者側がその適性や能力を見極め、正しく評価することが重要です。また、本人の要望や体調、働き方にも配慮しながら、適材適所のマネジメントを行うことが求められます。
人材マネジメントを行う際には、人件費といったコスト面にも対策が必要です。特にシニア世代の雇用に関しては、「高年齢雇用継続給付」といった公的補助を積極的に活用することが大切です。
高年齢雇用継続給付は、満60歳以上のシニア世代を雇用する企業に対して、一定の要件を満たすことで、賃金の一部を補助金として支給する制度です。ただし、この制度は2025年4月から規模が縮小されるため、注意が必要です。
参照元:厚生労働省「高年齢雇用継続給付の見直し(雇用保険法関係)」【PDF】(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000744250.pdf)
シニア世代の雇用に関しては、「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」といった制度の活用も重要です。令和5年度に「生涯現役コース」が廃止されましたが、それに伴い65歳以上のシニアが「特定就職困難者コース」に追加されました。
この制度では、高齢者などの就職困難者を、ハローワークなどを通じて採用・継続雇用する事業者へ助成金が支給されます。企業の人件費削減に貢献する制度です。
「人生100年時代」と言われる現代において、定年退職後も働きたいと考えるシニア世代は少なくありません。企業にとっても、長年の経験と技術を持つシニア人材は魅力的です。特に、人手不足が深刻化する自動車整備業界では、多くのシニア整備士が活躍しています。
一方で、シニア整備士の雇用には企業側の配慮が欠かせません。まずは、シニア整備士を取り巻く状況を正しく理解し、適切な対応を行うことが重要です。
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