どのような企業や業種でも経営失敗や社会情勢の影響などによって赤字経営になってしまうリスクはあります。だからこそ、自動車整備工場の経営においても赤字の原因や黒字化に向けた対策などをあらかじめ考えておくことが大切です。
自動車整備工場のみならず、企業が赤字に陥る原因には社会的な要因と、自社の体制など内部的要因の大きく2パターンが考えられます。
自動車整備工場は自動車の整備や各種行政手続きの代行などによって営業利益を出していく業種です。そのため、必然的に売上や事業の規模は営業エリア内の自動車の保有率に影響されます。
現代では「車離れ」といった言葉がメディアなどでも語られるように自動車の保有率が減少傾向にあり、自分で車を保有せず電車やバスを利用したり、レンタカーやカーシェアリングを利用したりといった人も増えています。
加えて少子高齢化が深刻になっており、人口減少による車ユーザーの減少という市場規模の縮小が赤字リスクの1つです。
昭和や平成初期の自動車整備工場に求められていた知識や技術と、令和の現代において求められている知識や技術は大きく違っており、現代の自動車整備工場や技術者はかつての自動車整備に関連したスキルを備えているうえで、さらに現代の高度に発展した自動車システムについても正しいスキルを有していなければなりません。
またガソリン車に加えてハイブリッド車やEVカーの普及に伴う多様化も進んでおり、車に搭載されているプログラムやシステムも日進月歩で進化していることがポイントです。
特に中小規模の自動車整備工場や、古くから地元住民を相手に営業を続けている工場などの場合、価格設定や受発注に伴う入出金の管理といった財務面の意識がおろそかになっていることも少なくありません。
加えて赤字化を恐れて顧客を集めようと、その場の思いつきで値引きやサービスに応じるといったことも、結果的にはどんぶり勘定の体質を根付かせて経営悪化を招く悪循環の要因です。
技術者として自動車整備工場の経営に向き合ってきた人の中にはお金の計算が苦手な人もいるでしょうが、財務管理の適正化は赤字回避を目指すうえで不可欠です。
特定の業務オペレーションが確立されている自動車メーカーやカーディーラーと異なり、自動車整備工場では顧客からの様々なオーダーやニーズへ合わせて適切なサービスを提供しなければなりません。そのため画一的なマニュアルや業務フローでは対応しきれず、その場その場で判断したり作業したりといったこともあります。
しかし明確化されたフローが定まっていないと業務効率が低下して、人件費やロスが増大し、キャッシュフローの悪化を招きます。
自動車整備工場の中には安定した顧客確保を目指して、企業と契約してその会社の社用車や公用車の整備をまとめて請け負っていることもあるでしょう。
しかし、このような契約は顧客数や車両数の確保にはつながりやすい反面、全体で見た際に車両1台当たりの作業単価が低くなってしまうことも珍しくありません。
そうなった場合、たくさん仕事をしているのに売上につながりにくいという悪循環に陥るリスクが増大します。
あらゆる企業や経営において、これまでの財務諸表や経営データをチェックして過去の売上の変化や赤字化への推移を確認・分析することは最重要の取り組みの1つです。
なお、過去の経営実績を分析する時は単に数字の変化を追うのでなく、どうして売上が減じたり支出が増えたりしているのか、その時々で発生した要因についても合わせて考えることが必要です。
適切な分析や確認ができない限り、赤字の原因を解消することは困難となります。
自動車整備工場の売上増加を目指す場合、新規顧客の獲得や新しい販路開拓を考えることも大切です。しかし宣伝広告には相応の費用がかかることも多く、現在進行形で赤字経営になっている企業ではプロモーションにお金を使うことも難しいでしょう。
そこで、無料で使えるSNSを活用したり、すでに存在しているホームページの内容を刷新したりして、コストを抑えつつ幅広いユーザーへ自社の特徴や魅力、キャンペーン情報などを共有していける環境づくりは大切です。
新しい顧客の取り込みを目指しつつも、既存顧客が離れないよう顧客満足度の維持向上に取り組むことも赤字脱却のポイントです。
ただし、現在と全く同じ状況では赤字化の脱却を叶えにくいため、既存顧客へ積極的にアプローチして新たな需要を開発することも経営戦略の1つとなります。
無理な売り込みや値上げといったものを行うのでなく、新しい魅力を提供してWin-Winの関係を目指すことが肝要です。
現代の最新車両は整備や調整にも専門スキルや専用器具が必要になっており、常に最先端を追いかけようとすると設備コストが増大して、受注が増えているのにいつまで経ってもキャッシュフローが正常化しないといったリスクが発生します。
そのため地域の自動車ユーザーの動向やニーズを調査したうえで、場合によっては最新車の整備をしないと割り切ることも赤字化解消の方法です。
ただし将来的な経営を見据えれば、状況に合わせて考えられる余裕の確保を目指しましょう。
社会情勢の影響による物価の高騰やインボイス制度の開始、最低賃金の上昇などにより、仕入れ価格や取引先との関係性といった対外的な面にも色々な変化が生じています。
そのため自動車整備工場として仕入先や仕入れ価格を見直し、適正価格をシミュレーションしたうえで料金設定へ反映させることも大切です。
ただし急な値上げを断行すると顧客が離れるリスクも増えるため、納得してもらえるサービス品質を目指します。
自動車整備工場として整備業だけで赤字化を改善できない場合、自動車に関するノウハウを活かして新しい事業をスタートさせてみることも赤字脱却のアイデアの1つです。
上述したように現在ではレンタカーやカーシェアリングといったサービスを利用しているユーザーも増えており、自動車販売やカーリースなどのサービスを展開したり、有力なフランチャイズへ加盟して集客力アップを目指したりといった選択肢もあります。
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